【論考】ICO、変わる潮流 「禁止」から「枠組み作り」の時代へ 資産の下限条件、引き出し金額管理、トークン保有者に選択権付与…

仮想通貨技術を使った資金調達「ICO(新規仮想通貨公開)」。詐欺案件の可能性についての指摘などから、これまで禁止に向けた動きも各国で顕著になってきていたが、ブロックチェーン技術を活用した透明性や公正性を担保する仕組みが誕生し、「禁止」から「枠組み作り」に風向きが変わりつつある。

ICOは、企業や開発者などの実施主体が独自トークンを発行・販売し、投資家側から資金を調達することができる仕組み。IPO(新規株式公開)などと異なり、実施に際する第三者機関の審査などを介さずに行われ、これまでは上場企業などに限られていた大幅な資金調達にスタートアップなども参加することができる。

◯ICOとは? 仮想通貨技術を使った資金調達 独自トークンとは? IPOとの違いは?

一方で、その実施主体や資金の使用用途に関する不透明性のほか、調達した仮想通貨をドルを円に替えて持ち逃げするなどの詐欺事件のほか、投資側のマネーロンダリングに利用されるケースもあり、ICO自体の危険性についても指摘が起きていた。韓国や中国では、既にICOが禁止されている。

しかし、ブロックチェーン技術を活用した安全性を担保する仕組みが誕生し始め、ICOのこういった危険性は徐々に最小化されつつある。その最初の技術は、ICOのトークン取引に絶対性を持たせる契約履行の自動化技術「スマートコントラクト」。そして今年、ICOの実施主体側に調達資金の使用ルールを定める「DAICO」という枠組みが浸透する見込みとなっている。

◯DAICOとは? 調達資金の使用時期や引き出し金額を規定 プロジェクト中止で投資家側に残り資金を返却

◯スマートコントラクトとは? ICOに活用される契約・取引の自動化技術 仮想通貨イーサリアムに実装

さらに投資側に対する参加ルールも明確になり始めている。その一つが「KYC(Knowing Your Customer)」という仕組みだ。この仕組みを導入しているICOに投資側が参加するには、パスポートや市民証などのIDカードのコピーや銀行預金証明書、公共料金の支払証明書など添付する必要があり、認証制度を取り入れることによってマネーロンダリングなどの抑止効果につなげている。

◯KYCとは? ICO投資側に求められる本人確認 案件や投資金額によって異なる基準 身分証提出など必要に

世界の経済大国もICOについて、既に条件付きで実施を認める流れになっている。アメリカは一定の基準を満たしてICOの実施主体に認可を与え、ICO実施を解禁している。認可を受けないICOプロジェクトは違法となるが、合法的な資金調達の方法として、既に多くのスタートアップ企業のほか大手企業も、この仕組みの有効活用に向けた準備を進めている。

ロシアもICOの実施を条件付きで認める方針だ。条件の一つがICO実施主体の保有資産額。ロシア地元メディアの報道によると、ICOの実施主体には保有資産1億ルーブル(約2億円)が求められる。実施主体が一定規模の資産を保有していることによって詐欺行為が行われる可能性を相対的に低くしたい考えとみられる。

◯【速報】ロシア、ICO解禁へ 認可制でトークン発行合法化 資産要件「2億円」 アメリカも事実上適法化

こうした流れを加味すると、ICOは将来的に誰でも実施できる資金調達方法にはならない可能性が高い。実施にはハードルや条件があり、それをクリアしないとICOを合法的に実施することはできない枠組みになる流れだ。一方でICO本来の良さの一つでもある世界中に投資を呼びかけられることや、資金調達に要する時間が短くなることなどは残る。

日本ではICOに関する明確なルールはまだない。一方で、こうした経済大国の動向については政府も注視しているものとみられる。世界がICOについて「禁止」から「枠組み作り」に潮流を変化させている中、日本政府の今後の方針にも注目が集まっている。

※ICO LABに掲載している記事コンテンツは、ICOプロジェクトへの投資や資金調達の実施を推奨するものではありません。ICOは日本を含めて世界各国がそれぞれ実施・投資に関するガイドラインや法規制、解禁などの動きを個別に進めており、各国の方針に則って適正に関わる必要があります。